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2019/01/09 (2019年01月 のアーカイブ)

Frizing でひっかかりやすい所

IoT とか Make 界隈で良く使われている Frizing という回路図エディタがあります。

基本的に初心者向けであまり大規模なものには向かないのですが、「ブレッドボード図」が簡単に描けるというのが特色で、ちょっとした工作の解説用の図を作る時なんかに重宝されています。

多分ブレッドボード図を描くために使っている人が大多数なのではないかと思いますが、機能としてはブレッドボード図、普通の回路図、基板のアートワーク、ガーバーの出力、おまけにソフトウェアのコードまでを一括管理しようというなかなか遠大な目標を持つツールです。

まあブレッドボード図が必要ないのなら Eagle なり KiCad なりを使った方が良いとは思いますが。

現在バージョンは 0.9.3b のベータ版で少しバギーな部分を残したまま既に2年半くらいアップデートが無いので今後の開発がどうなるかは少し気になる所ではあります。

frizing.org

それで、この Frizing で在り合わせの部品でブレッドボード図を描くだけなら、なかなか快適ではあるのですが、それ以上の事、独自の部品を登録したり、回路図を描いたりという事をやろうとすると色々問題点が噴出して一気にハードルが上がるんですよね。去年の年末あたりから割合ちゃんと触る機会があって、かなり問題を回避するコツを掴んできましたのでポイントだけ紹介します。


そもそも描きたい図はどれなのか


ブレッドボード図と回路図を描くのであれば、回路図=>ブレッドボード図の順序で書いた方が効率が良いです。

ブレッドボード図と回路図は一応並行で進める事もできるのですが、片方で描いた配線が反対側では仮接続のような状態になりますので、それが邪魔で回路図が書きにくい事があります。


作った部品のピンが勝手にショートしてしまう


新しい部品を登録する時、似た部品を基にして画像だけを差し替えて作る、という手法が良く紹介されているのですが、例えば GND や電源が複数本あって内部で繋がっているというような部品を基にしてしまうとその内部接続をそのまま引き継いでしまい、部品エディタの操作で修復する方法が無さそうです(見つけられないだけ?)。

例えば PIC16F883 の場合 PIN 8 と 19 がどちらも GND で内部で繋がっています。これの画像だけを差し替えて新しい部品を作っても PIN 8 に配線しようとすると 19 にもつながってしまいます。

PIN 8 につないだのに PIN 19 にも繋がっている。

PIN 数多めの部品は複数電源やGNDが複数出ている事が多いのでベースにするのは小さめのIC等で後から部品エディタで PIN 数を増やした方が良さそうです。


フォントの大きさがおかしくなる


これは良く知られた問題ですが、ブレッドボード図でも回路図でも、Inkscape で 0.1 インチグリッドに載せて SVG で描けば差し替え用の画像が描けますが、フォントの大きさが狂ってしまいます。

Inkscape が出力する SVG ファイル中のフォントサイズ指定が 'px' になっているのが Frizing で解釈できないのが原因のようなので、SVG をエディタで開いて font-size の 'px' 指定を消せばなおります。それも面倒ならすべてのオブジェクトをパスに変換してしまえば避けられます。どちらが良いかは一長一短。


回路図を描く時、ジャンクションが変なところについてしまう


特にブレッドボード図を先に書いて回路図エディタで仮接続を頼りに線を引いていると下の図のように部品の足の所にジャンクション(大き目の黒丸)が付いてしまいがちです。

これはトポロジー的には下の図のようになっていて部品間ワイヤーが2本以上集まっている所にジャンクションが付くという仕様のせいです。

下の図のように枝分かれさせたい場所にあらかじめ折れ曲がり点を作っておき、部品の足からその点に向かってワイヤーを引くという手順を取ると回避できます。なおこの時、ブレッドボード側の仮配線を一度消さないと、仮配線が邪魔で部品の足から出るワイヤーを選択できない事があります。

部品を登録する時にピン割り付けが面倒くさい

既存部品の画像を差し替えて新しい部品を作る時、各ピンがSVG画像のどこに対応するかを毎回指定するのが面倒くさいのですが、これは SVG 内のピンに相当するオブジェクトのプロパティで ID に "connector0pin"、"connector1pin" などの名前を付けておくと自動的に割り付けられます。部品エディタで各端子を表す ID 名 "connectorN" に "pin" を付けた名前です。わかりにくいですね。

なお、この機能はある程度認知されているようですが、うまく動作しないという報告もそれなりにあります。実際にやってみると、今のところおかしな挙動には遭遇していないのですが。

基板パターン図用の画像が差し替えできない

基板パターン用に使う SVG 画像は表面、裏面に配置するパッドをそれぞれまとめて "copper0"、"copper1" という名前を付けたレイヤーに入れておく必要があります。

更にこれは "プレーンSVG" 形式で保存した場合の話で、デフォルトの "Inkscape SVG" 形式で保存する場合は、各パッドをレイヤーではなく"グループ" でまとめてグループの ID に "copper0"、"copper1" という名前を付けると大丈夫なようです。

以上 Frizing で遭遇した問題の workaround 的ノウハウでした。

そもそもこのツール、ブレッドボード図を描くというニッチな所に特化している感じではありますが、コードエディタが統合されていたり、曲がりなりにもオートルーターが搭載されていたり、ガーバーが出力できたり、目指している所はなかなか凄いです。

今後に期待したいと思います。

Posted by g200kg : 2019/01/09 02:35:44