偏ったDTM用語辞典
RMS アールエムエス
信号の大きさの測り方のひとつで、時間と共に変化する信号の実効的な大きさを示す値の事。「Root Mean Square」の略語で、日本語では「実効値」と言う。
交流信号の大きさの表現として通常使われている方法であり、家庭の電灯線が100V(ボルト)というのもこの「実効値」が100Vである事を指している。
算出方法としてはそれぞれの瞬間の値を自乗して平均をとりその平方根の事であり、意味としては電力波形の面積に即した値、すなわち電力波形をならして同じ面積になるような直流信号を考えた時の大きさとなる。
数学的には「Root Mean Square」の訳語は「二乗平均平方根」であり、前述の値の算出方法そのものを指している。 信号の大きさを表す方法として、RMS 以外の測り方としてはピークプログラムメーターで表示されるピークレベル(絶対値の最大値)や波形の正負の頂点間の値である( p-p ピークトゥピーク)がある。RMS 値の意義は伝送するパワー(電力)に即した値となる事であり、ピークレベルが同じであっても波形によって RMS 値は変化する。
波形がサイン波の場合は、波形のピークレベルに対して RMS 値は\(1/\sqrt{2} \)の大きさとなる。即ち、ピークレベルが\(\sqrt{2}\)V=1.414V の時に RMS 値が1.0Vとなる。p-p値 は平均が0とすればピークレベルの2倍であるので、
1.0Vrms = 2.828Vp-p
という関係になる。
通常、音響機器の入出力信号のレベルなどは RMS 値が用いられる。例えば基準出力値が+4dBu ( =1.228V )の機器が基準レベルのサイン波を出力した場合、ピークでは+7dBu( =1.737V )、p-pでは3.473Vの信号となる。
電圧の単位、ボルトに関してはVrms (ボルトアールエムエス)として単位のように扱われる場合もある。これに対してピークレベルでの電圧はVpあるいはVpeak、ピークトゥピークでの電圧はVp-p(ボルトピークトゥピーク)と表現される。
エフェクターの1つであるコンプレッサーの動作モードで「ピーク」と「RMS」の切替えを持つものがある。この場合、「ピーク」モードの場合は波形の最も高い部分、「RMS」モードの場合は上で述べたRMS値を参照してコンプレッサーが動作する事になる。「ピーク」モードの場合は波形の全ての部分で設定値を超えないブリックウォールリミッター的な動作となるが、聴感上の音量とは一致しない事がある。逆に「RMS」モードでは聴感上の音量にほぼ一致した一定のレベルでコンプレッション動作が行われるが、音によっては部分的に設定したレベルを超えた信号が出力される事になる。